第一回 「すべてがFになる」 presented by 草藤甲矢
2015年03月01日 22:19
「すべてがFになる」 作者:森 博嗣 講談社文庫
皆さん、ミステリーはお好きですか?
好きな方はもちろん、嫌いな方にもオススメするのがこの一冊「すべてがFになる」です。
ミステリーと一口に言っても、館もの、密室もの、孤島もの、ギャグミス…etc 様々なものがありますが、その中でも近年注目されているのが「理系ミステリー」。今回紹介する一冊もこのジャンルです。
「すべてがFになる」は1996年に第一回メフィスト賞を受賞し、二年後の1998年に発表された「探偵ガリレオ」シリーズとともに理系ミステリーを一躍有名にした立役者です。
しかし同じ理系ミステリーでも、「すべてがFになる」は探偵ガリレオのような科学知識を重視したトリックではありません。むしろその性質は、論理的思考を重んじる一般的な本格ミステリーに近いと言えます。
ならばどこが理系ミステリーなのか?その理由は二つありますが、読了前の皆さんには一つだけお教え致しましょう。(一つは最大のトリックに繋がっているので……)
それは魅力的かつ理知的、そして天才的な登場人物が醸し出す特有かつ独特、それでいて幻想的な雰囲気です。
今や使い古された言葉となってしまった「天才」ですが、この作品の登場人物は真に天才と称するに相応しく、また個性溢れる人たちです。ですがその魅力を余すところ無く書き記すにはこの余白は狭すぎるので、少しだけ触れておきましょう。
主人公の一人にして大学助教授「犀川創平」。煙草と珈琲が無くては生きていけない人種。
主人公の一人にして大学一年生「西之園萌絵」。平行思考のお嬢様。
――そして最高の天才「真賀田四季」。残念ながら、私ではこの人を表すことはできません。
まだまだ素晴らしいキャラクター達はいます。特筆すべきことに、この作品では(本格ミステリーにありがちな)キャラクターをトリックの為の装置として描くのではなく、際だった個性を持たせることに成功しています。
素晴らしいキャラクター、独特の理系的雰囲気、そして最高のトリック……ぜひご一読下さい!