豚骨ラーメンの冒険 ~絵本絵抜きで~
ラーメンランドには愉快なお友だちがいっぱいいます。
みんなニコニコ仲良く、争いなんてありません。
試験もなんにもありません。
なんて平和なラーメンランド。
おっと、今回は絵抜きだから見た目の説明もしないといけない。
ラーメンランドの仲間は顔のついたどんぶりの下に身体が生えている二頭身。頭の中はもちろん熱々のラーメン。
さて今日もぽかぽかお日様のもと、豚骨ラーメンは冒険をします。
豚骨ラーメンは名前の如く豚のようにコロコロ太ったのんびり屋。
いつでもニコニコみんな大好き豚骨ラーメン。
豚骨ラーメンは今日もいつものようにコテコテと歩いていました。
そこへお友達の醤油ラーメンがやってきました。
醤油ラーメンはラーメンランドの正統派イケメンです。
今日も素敵なしょうゆ顔です。
「やあ豚骨ラーメン、どこへ行くの?いつになったら終わるんだい?」
豚骨ラーメンは答えました。
「終わりなどはないさ。終わらせることはできるけど。」
「そう、じゃあお気をつけて。でも僕も一緒に行こう」
醤油ラーメンを仲間に加えた豚骨ラーメンはまた歩きはじめました。
コテコテコテコテ
いつにも増して厳しい直射日光のせいでしょうか。
豚骨ラーメンのこめかみから脂汗がタラリ。
それに気づいた醤油ラーメンはこう言いました。
「どこか木陰で休もうか、豚骨ラーメン。ボク、水筒を持ってきたからそこで飲もうよ」
「それは良いアイディアだねぇ、醤油ラーメン君」
そうと決まれば話は早い。
2人はちょうどよく見つけた大きな木の下で休みました。
チョロチョロチョロチョロ
よくできたもので、醤油ラーメンが持ってきた水筒はカップが付いていました。
醤油ラーメンはそれを使って豚骨ラーメンんの為に飲み物を注ぎました。
「はい、どうぞ」
「ありがとう醤油ラーメン君」
カップ越しに伝わる飲み物のヒンヤリ感にニコリ。
豚骨ラーメンは一気にカップを傾けました。
「ブー!」
そしておもいっきり吐き出しました。
可哀想に、正面にいた醤油ラーメンをそれを全て受けてしまいました。
「どうしたんだい?豚骨ラーメン」
醤油ラーメンは驚きながら尋ねました。
対して豚骨ラーメンは息も絶え絶えに答えました。
「どうしたって、だって、醤油ラーメン。君、これ、この飲み物、醤油じゃあないか!ボクは豚骨ラーメンだからこんなの飲んだらスープが変わっちゃうよ!」
どうやら醤油ラーメンの大好物の濃い口しょうゆは豚骨ラーメンのお口に合わなかったようです。
「ごめんよ、豚骨ラーメン」
すっかりしょげてしまった醤油ラーメンは折角の正統派イケメン顔も台無しです。慌てて豚骨ラーメンは言いました。
「ううん、ボクも怒鳴っちゃってゴメンね。自分で水筒を持ってこないボクが悪いんだ。醤油ラーメン君は悪くないよ」
「ボクもそう思ったよ」
元気を取り戻した醤油ラーメン君はしょうゆスマイルで言いました。
そうして仲直りした2人はまた冒険をはじめました。
コテコテコテコテコテコテ
ラーメンランドは魅力がいっぱい、歩くだけでテーマパーク。
道で拾ったメンマをかじりながら歩いていた2人の前に、怪しい影が・・・・・・・・カレーラーメンです。
「へっへっへっ! お前ら何やってるんだ!」
「あ、カレーラーメン君」
カレーラーメンは近所の悪ガキとして有名です。
のんびり屋の豚骨ラーメンはいつもカレーラーメンに絡まれます。
「楽しそうなポンコツラーメンはこうだ!こうだ!」
「ボクはポンコツじゃなくて豚骨だよ~」
豚骨ラーメンの言葉なんて聞かずに、カレーラーメンは自分の頭のどんぶりを豚骨ラーメンんのどんぶりの中へと傾けました。
「うわあ、やめてよカレーラーメン君。スープが混ざっちゃう」
「そうだよ、カレーラーメン。君のスープも減っちゃうよ」
カレーラーメンのいたずらは、やられた方も嫌だけど、やればやるほど自分の体液が減る捨て身のいたずらです。
それでもカレーラーメンはやめようとはしません。
彼はそれほどに望んでいるのです、誰かの温もりを、繋がりを。
「へっへっへ! 今日はこのくらいで許してやるぜ! はひふへほー」
自分を冒険の仲間に入れてくれそうにないと悟ったカレーラーメンはそう言っていなくなってしまいました。
いたずら者のカレーラーメンには困りものです。
「おやおやおや!」
醤油ラーメンは豚骨ラーメンの顔をみてビックリ仰天。
「豚骨ラーメン、君、顔がおかしなことになっているよ!」
「ええ?」
見ると、豚骨ラーメンの脂汗は滝のよう。
どんぶりの中のスープは透き通った白からドブ水のよう。
「そうか、スープが混ざっちゃったんだ」
豚骨ラーメンのスープは醤油とカレーが混ざってひどい事になってしまいました。
あらあら大変。
「スープが汚れて力が出ない~」
「大変だ。すぐにラーメンおじさんの所へ行こう」
醤油ラーメンは豚骨ラーメンをえっさほいさと背負っていきました。
醤油ラーメンが走るたびに豚骨ラーメンの汁はこぼれていきますから、顔色もますます土気色になります。
「ラーメンおじさん、助けておくれ!」
醤油ラーメンはラーメンハウスのドアを思いっきり開けました。
中にはお昼ご飯の味噌ラーメンを食べているラーメンおじさんがいました。
「おやおや、どうしたんだい?醤油ラーメンと・・・・・・」
「豚骨ラーメンがカレーラーメンにスープを汚されちゃったんだ!」
「おやおや、あのいたずらラーメンがまったく。どれ、おいで豚骨ラーメン」
ラーメンおじさんは食べかけの味噌ラーメンを脇に置いてすぐに治療に取り掛かりました。
「ふむふむ。これは新しいスープを作らないといけないなあ。醤油ラーメン君、餃子おばさんを呼んできておくれ」
「はい!」
醤油ラーメンは元気よく返事をして、走り出しました。
餃子おばさんは庭でピクニックをしていました。
「あら醤油ラーメンどうしたの?」
「豚骨ラーメンがカレーラーメンにスープを混ぜられたんだ!」
「あら大変。すぐにスープを作らないと」
餃子おばさんは食べていたカップ焼きそばを道端に捨てて立ち上がりました。
「さあ豚骨スープを作りましょう」
ラーメンハウスに戻った餃子おばさんはまず豚骨を煮出しました。
グツグツグツグツグツグツグツグツ
「うーん、うーん」
「がんばれ、豚骨ラーメンすぐにスープができるからな」
苦しそうな豚骨ラーメンを醤油ラーメンが必死に励まします。
ズルズルズルズルズルズルズルズル
ラーメンおじさんはすっかり伸びきった味噌ラーメンをすすります。
「ようし、これでおいしい豚骨スープができたわ!」
ついにスープができました!
「豚骨ラーメン、新しいスープよ!」
餃子おばさんが新しいスープを注ぎました。
今まで入っていた汚いスープがあふれ出て、豚骨ラーメンのスープはピカピカの豚骨スープになりました。
「うわあい、元気がでたぞ! ありがとう、ラーメンおじさん、餃子おばさん」
「いいんだよ、良くなってよかったねえ」
「本当に、よかったわ」
これでいつもの豚骨スープに戻りました。
いつでもニコニコ、みんながニコニコ。
ラーメンランドの仲間はみんな友達ルンルンルン。
了